『MFS学園物語 ハロウィーン編』



「ハロウィーンパーティー?」

「そうそう! 皆で仮装してさ。おもしろそうでしょ!」

「くっだらねぇ……」

「あぁ〜またそうやって……。じゃーいいよ、ラグだけ不参加ね! もう他の皆からはOKもらってるし!」

「他の皆?」

「セリーン先生でしょ、エルネスト先生でしょ、ヴィルト先生にブゥ学園長先生!」

「センコーばっかかよ」

「ちゃんと生徒もいますー! ちびラグ君とラウト君でしょ、あと中等部生徒会のライゼちゃんにブライト君。あとね、なんとアルディート先輩も来てくれるって!」

「ちょっ、待て! なんでアルまで!?」

「なんでって……。だって、先輩呼んだらラグも参加してくれるかなって思ったんだもん……」

「うっ……。わ、わーったよ。参加してやるよ」

「ホント!? 良かったー!」

「つーか何でオレが一番最後なんだよ、誘うの」

「え? ……だってラグ一番ノリ悪いから。周りから固めた方がいいってエルネスト先生が」

「あんの野郎……。で? オレは何を着るんだ。どーせ、もう決まってんだろ」

「うん! えっとね、ラグはヴァンパイア役!」

「ヴァン……はぁ。で、お前は?」

「私は……、と、当日まで内緒! ……恥ずかしいから

「?」



 ◆◆◆ ◆◆◆



 そして、パーティー当日。

 カランコロン♪

 そんな小気味よい音と共に、アルディートが経営している喫茶店の扉が開いた。


「お、ラグか! 待ってたぜ♪」


 しっかりばっちり仮装済なアルディートを見てラグは脱力する。


「はぁ……」

「おい、来ていきなり溜息かよ! ったく、本当は嬉しいくせによー。相変わらず素直じゃねぇな〜」

「他の奴らは?」

「スルーかよ! ……はぁ。センセ以外は皆揃ってる。今奥で着替え中だ。お前もさっさと着替えて来いよ。ヴァンパイアだって?」

「……アルもそれ」

「何だその『何で一緒なんだよ』って顔は! 俺はヴァンパイアじゃないぜ。ドラキュラ伯爵様だ! お前よりも格上だぞ」

「どーでもいい。……あぁ〜さっさと帰りてぇ……」

「そんなこと言っていいのかなぁ〜。折角俺がビッグサプライズ用意してやったのに」

「ビッグサプライズ?」

「そ。まぁすぐにわかるさ! ほれ、とっとと着替えて来い!」


 一方、奥でお着替え中のカノンとライゼは……。


「ライゼちゃんかっわい〜! 天使にぴったり!」

「そ、そうでしょうか……。少し恥ずかしいです」

(早くブライト君に見せてあげたいな〜♪)

「カノンさんはまだ着替えないんですか?」

「うっ……うーん。まだ勇気が出なくて……あはは」

「どんな格好なんです?」

「……これ」

「!? こ、これをカノンさんが?」

「うん。勇気いるでしょ? かなり……」

「で、ですね……。カノンさんが選んだわけではないんですか?」

「あのね、それがね、聞いてくれる!?」

「は、はい」

「ほら、ラグを呼ぶために、まずアル先輩を誘ったでしょ! そうしたらね! 私がこれ着れば参加してくれるって……」

「あぁ〜……。き、きっと似合いますよ! 良く見たらとっても可愛いじゃないですか!」

「うん、可愛いのはわかるの。でもね、これ来て皆の前に出るのはかなり勇気がいるの……!」

「が、頑張ってください、カノンさん!」



 ◆◆◆ ◆◆◆



「セリーン達遅ぇなぁ〜」


 カランコロン♪


「ぶ〜♪」

「お! ブゥセンセ、いらっしゃい! ってことは……」

「邪魔するぞ」

「セリーン待ってたぜー! どうよ俺のこの格好! 最高に決まってんだろ!?」

「あの子はまだ来ていないのか?」

「スルーですかい……」

「クス、遅くなってすいません。会議が長引いてしまいまして」

「あぁ、エルネストセンセ。どーも」

「子供達はどこだ?」

「おっと、ヴィルト先生まで! ライゼちゃん達なら奥で着替え中ですよ」


 と、そのときぶつぶつ文句を言いながら奥から出てきた者が。


「ったく、なんだってオレが狼男なんだ。もっとカッコいい格好が……」

うはあああああああ! い、犬耳ぃいい!?

「げええ!? な、なんだっててめぇらがここに!?」

「あれ? 僕たちが来ること、君は知らなかったのかい?」

「き、聞いてねえええ!! うぎゃああああぁーーー!!!」

「ちょっ、お前どれだけ私を喜ばせたら気が済むんだ!? とっても似合っているぞ、このイ・ヌ・ミ・ミ☆」

「犬じゃねぇ! 狼だーーー!!」

「はぁ……。いつ見ても羨ましいぜ」


 続いて出てきたラウトはすぐに父の姿を見つけ顔を輝かせた。


「あっ、お父さん! 学校終わったんだね! 見てみて、僕悪魔だよ! カッコいい?」

「あぁ」

「へへへ〜♪ ほらブライトも早くおいでよー! 似合ってるって!」

「似合ってても嬉しくありません! はぁ……何で私がピエロなんですか。しかも頭にかぼちゃ……しくしく」

「くっくっ、すっげぇ似合ってるじゃねぇか……っと、お! ラグも着替え終わったんだな」

「ったく、いきなり騒がしいな」

「騒がしいな、じゃねぇ! おいこら! 何でオレにこいつらが来ること教えなかったんだ!?」

「めんどくせぇから」

「こんのクソ兄貴ーー!!」

「まぁまぁ。相変わらずだねぇ、君たち兄弟は。ラグ、カノンは?」

「……知らねぇよ。そういやまだ出てこねぇのか? アル」

「ん? あぁ。うーん、やっぱちょっちカノンちゃんには刺激が強すぎたかなぁ〜」

「……? ちょっと待て、お前あいつが何の格好するか知ってるのか?」

「勿論! だって俺がリクエストしたんだぜ♪」

「リクエスト!?」

「そ。きっと似合うと思ってな」


 そして次に姿を現したのは――。


「お待たせしました!」

「あーっ姉ちゃん天使だー! 綺っ麗〜! ねっねっお父さん!」

「あぁ……そうだな……っ」←急に亡き奥さん思い出して涙目な父。

「ふふ、ありがとう。……えっと、カノンさん?」

「…………」


 すぐそこにいるようだが、なかなか皆の前に出てこないカノン。


「大丈夫ですよ、全然変じゃありませんて!」

「……だって、そこ皆いるんでしょ? ……先生達も」

「ん? カノンか。何で出てこないんだ?」


 セリーンはちびを一旦離し、カノンの元へ向かった。


「ほぉ! 可愛いじゃないか!」

「ですよね。カノンさん、大丈夫ですよ!」

「で、でも……」

「ほら、行ってこい!」

「きゃ!」


 セリーンに背中を押され漸く姿を現したカノン。


「!!」

「!!」

「ひょおおお! 思ったとおり。超可愛いぜカノンちゃん!」


 カノンの格好は、“キャットバットガール”でした。(是非画像検索してみてください♪)


「ぶぅぶ〜♪」

「へぇ、驚いたなぁ。本当に似合っているよ、カノン」


 エルネストに微笑みかけられ、元々赤かったカノンの顔が更に赤みを増した。


「〜〜〜っ! や、やっぱりムリ〜!!」

「あ、また行っちゃった。可愛いのになぁ。な、ラグ?」

『…………』

「あり、こっちにも刺激強すぎたか……?」


 揃って呆けている兄弟を見てアルディートは苦笑した。




 ◆◆◆ ◆◆◆




「今夜はお前の為にお菓子をいーっぱい用意してきたからな! ほら、『Trick or treat!』って言え!」

「誰が言うか! てめぇから菓子なんて欲しくねーんだよ! っていうかいい加減離しやがれこの変態魔女がー!!」

「わーい! お父さんお菓子ありがとー!!」

「ありがとう、父さん!」

「いや」

「お父さんお化けの格好しててもカッコいいね、姉ちゃん!」

「ラウト、フランケンシュタインって言うのよ?」

「そっか! ……ねぇ、姉ちゃん、ブライトまだいじけてるよ?」

「もう……。ブライト」

「え、は、はい!」

「一年に一度のハロウィーンよ。皆で楽しみましょう?」

「は、はい……」

「それにその格好、私は可愛くて好きよ?」

「すっ……!? あ、ありがとうございます! ラ、ラ、ライゼ様もとても、か、可愛らしいですっ

「え? なぁに?」


 そんな皆を見て、結局上着を羽織った格好のカノンは満足げに笑った。


「皆楽しそうで良かった〜。ね、ラグも楽しいでしょ?」

「あー……、あぁ、そうだな」

「!?」

「あ? 何驚いてんだ」

「う、ううん! (絶対文句が出てくると思ったんだけど……)えへへ〜♪」

「な、何だその顔は!」

「カノン」

「げ」

「あっ、エルネスト先生! 今日は来てくださってありがとうございました!」

「いや、とても楽しませてもらっているよ。こんな格好こんなときでもないと着る機会なんてないしね」

「と、とっても似合ってます、牧師の衣装! エルネスト先生にぴったりです!」

「はは、ありがとう。カノンもとても可愛いよ」

「や、あの、その……あ、ありがとうございます!」

「けっ」

「クス……。ラグもとても似合っているよ、そのヴァンパイア姿」

「てめぇに言われても全然嬉しくねぇよ。てめぇはそんなスカートみたいな衣装着ると余計に女みてーだな」

「ちょ、ちょっとラグ!」

「へぇ……。まるで誰かに「似合っているよ」と言って欲しいような口ぶりじゃないか」

「え、エルネスト先生?」


 いつもとは違うエルネストの黒い微笑みに戸惑うカノン。


「はーい、そこそこ! こんな楽しい席で喧嘩なんかやめてくれよ!」


 そう言いながらカノンの背後からずずいとアルディートが顔を出した。


「アル先輩!」

「カノンちゃん、あーもうホント可愛いなぁ。やっぱ俺の目に狂いはなかった! 俺が本当にドラキュラだったら間違いなく君の血頂いてるね」

「あ、はははは……」

「おいこらエロ吸血鬼。お前の場合冗談が冗談に聞こえねぇんだよ」

「なんだぁ? ラグ。そんなこわーい顔しちゃって。お前も同じ吸血鬼なんだからこのくらいの事言わないとすーぐ干上がっちまうぜ?」

「くっだらねぇ!」

「なんだよなぁ、折角お前のためのビッグサプライズだったのに。男ならなぁ、お前もたまにゃあ甘い言葉のひとつやふたつ……」

「アル先輩、サプライズって何のことですか?」

「ん? あのなぁ……」


 見せつけるようにカノンの肩を抱き寄せたアルディートに、ラグの額にビキっと血管が浮いた。


アルーーー!!




「これぞハッピーハロウィ−ンだな! もう幸せ過ぎて倒れそうだ!!」

「今すぐぶっ倒れちまえ! あーもうっ最悪なハロウィ−ンだー!!」

「ぶっぶぶ〜♪」(訳:HAPPY☆HALLOWEEN♪)


 END.



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