ぴちゃん……ぴちゃん……。

 足音の他に響くのはそんな水滴の落ちる音と低い潮騒だけ。

 私達総勢6人は、潮の香りが充満する湿気た洞穴を一列になって進んでいた。

 はりきって先頭を行くラウト君が手にする松明の灯りだけが頼りの穴の中は、二人がどうにか並んで歩ける程度の幅しか無く、天井も私が背伸びをして手を伸ばせば届く高さにあった。この中で一番背の高いヴィルトさんは若干屈み気味に進んでいる。

 足元も壁も酷くぬかるんでいて気をつけていないとすぐにでも滑って転んでしまいそうだ。

(それにしても凄いなぁ)

 息を吐きながら視線を巡らせていると、

「おい、ちゃんと足元見て歩けよ。また転ぶぞ」

そうラグに釘をさされてしまった。……実はつい先ほど危うく転倒しそうになったところをセリーンに支えてもらったばかりだ。

 そのまま転んでしまっていたら今頃服はドロドロになり非常に情けない思いをしていただろう。

「しかし良くこんな長い穴を掘ったものだな」

 背後のセリーンが感心したように呟いた。

(ホントだよね……)

 私も何度目かの感嘆の息を漏らした。

 なんとあの地下室には更に隠し扉があり、そこがこの洞穴への入り口になっていたのだ。

 この洞穴は闇の民が戦争時代に掘ったものなのだそう。

 あの地下室は当時使用されていた偵察基地だったらしい。

 ライゼちゃん達の話によると、この洞穴は港から完全に死角になった場所に通じているのだという。

 詳しくは行けばわかるとラウト君がまた得意げに笑って教えてくれた。

 この洞穴がどれだけ前に掘られたものかはわからないが、このランフォルセの人たちが未だに気づいていないのだ。余程わかり難くなっているのだろう。

 そしてそこにライゼちゃん達がこの地に3日でやってきたという乗り物があるのだそうだ。

「もうかなりの距離進んだだろう。まだ着かないのか?」

 ラグがイラついたように前を行く3人に訊いた。

 私もそろそろ限界に来ていた。この圧迫感の中かれこれ一時間以上は進んでいる気がする。

 とうに方向感覚は失われていた。今自分達はルバートのどの辺りにいるのだろう。いや、まだルバートにいるのだろうか……?

「もうすぐだよ。もうすぐしたら出口だから頑張って!」

 無邪気な声で応援されて、流石のラグも小さく舌打ちしただけでそれ以上は何も言わなかった。

 そして、それから更にどのくらい進んだだろう。

「出口だ!」

 ラウト君の歓声が洞穴内に響いた。

 その直後、目の前が真っ暗になる。

「や、やだ!」

 私は驚いて悲鳴を上げる。

 すると前方からライゼちゃんの怒った声が聞こえてきた。

「こらラウト! 下りる前に松明渡しなさい!」

「あ。ごめん、忘れてた!」

 そして再び視界は明るくなった。

 松明がライゼちゃんからヴィルトさんに渡る。

「気を付けろ。そこまで高くはないが、ここには梯子がない」

 ヴィルトさんがこちらを振り向き教えてくれた。

 と、ライゼちゃんの姿が消え、タっという足音が聞こえた。

 次にヴィルトさんが消え、瞬間また暗くなったがすぐに松明の灯りで穴の中を照らしてくれた。

 ヴィルトさんの頭が私達の腰ほどの位置にあった。

 穴の向こうはまだ外ではないようだ。

 しかしかなり広くなっているようで、ライゼちゃんとラウト君の話し声が反響していた。

「お待たせー! 寂しくなかった?」

「遅くなってごめんなさい」

 何やら二人して誰かに話しかけているようだが……。

 疑問に思っていると、いつの間にかラグが目の前からいなくなっていた。

「ほら、早く来いよ。支えてやるから」

「う、うん」

 私は伸ばされた手を取ってそこから飛び降りる。

 足が着いたのは土ではなくゴツゴツとした岩肌。

 ラグから手を離し2歩ほど進んでから私はまた感嘆の声を上げた。

 そこはおそらく自然にできた洞窟だった。

 天井は高くドーム状になっていて、広さも学校の教室ほどあった。

 そして向こう、ぽっかりと空いた岩の隙間から夜の海が覗いていた。月が出ているのか海面が波に揺れキラキラと輝いている。

 そんな幻想的な風景につい見とれてしまった。――のも束の間、背後でセリーンの足音がして、ヴィルトさんが持っていた松明をこちらへ向けた瞬間、

「ひゃあああぁぁ!!?」

私は思わず悲鳴を上げてしまっていた。

 ライゼちゃん達の前でとぐろを巻き、どっかりとそこに寝そべっていた“それ”。

 “それ”は、大きな大きな白い“蛇”だったのだ。

 しかも、ただの蛇ではない。

 大きさもそうだが、その背には胴と同じ真っ白な翼が生えていた。

 その翼は鳥のそれではなく、ゲームなどに登場する“ドラゴン”の翼に近かった。

 背後で金属音が聞こえた。

 おそらくセリーンがその背の剣を抜いた音。

 見るとラグもいつでも抜けるよう腰のナイフに手を触れている。

 そう、どう見ても“それ”はモンスターだった。

 この世界に来てから何種類かのモンスターを見てきたが、こんなに大きなモンスターには遭った事がない。

 白蛇はゆっくりとその頭をもたげ、そんな私たちの方を見据えた。

 それだけでライゼちゃんたちの背を軽く超してしまい、瞬間二人ともそのまま食べられてしまうのではないかと思った。

 私は震える足でラグの後ろへ回る。

 なのに至近距離にいるライゼちゃんたちは全く恐れている様子が無い。

 それどころかライゼちゃんはまるで馬にするように、その白蛇の首を撫でていた。

「大丈夫です。彼女は人を襲ったりはしません」

 にっこり笑って言うライゼちゃん。

(か、彼女……?)

 彼女というからには、メスなのだろう。

 でも私はまだその彼女に近づく気にはなれなかった。

「そうだよ! そんなに怖がらないで。ビアンカはとっても優しいんだよ」

「ビアンカ?」

 明るく言うラウト君に私は掠れた声で訊く。

 もしかしなくても、その白蛇の名前だろうか……?

「そう。ビアンカ。カッコ良いでしょ?」

 自慢するように続けるラウト君に、私は頷けなかった。

 同じ、名前の付けられたモンスターでもブゥとはまるで違う。

 ブゥは見た目可愛くてモンスターだと言われてもピンと来なかった。

 だが彼女、ビアンカはどこからどう見ても“モンスター”そのものだ。

 そんな彼女と親しげなライゼちゃんたち。

 そういえば、さっき二人は誰かに話しかけているようだったが、まさか……。

「まさか、そのモンスターが乗り物ってんじゃねぇだろうな」

 ラグが怒りを押し殺したような低い声で訊く。

 私も今同じこと考えた。

 ラウト君が「カッコ良い」と自慢していた乗り物。

 ヴィルトさんの「快適とは言えない」という小さな呟き。

 そして、ドラゴンを思わせるその白く大きな翼。

 まさか、まさか……!?

「そうだよ! 僕達はビアンカに乗って、ここまで空を飛んで来たんだ!」

 得意満面で胸を張るラウト君に、私は眩暈を感じた。

「そんな見たこともねぇモンスターに乗って行くなんて冗談じゃねぇ!」

 ラグがすかさず文句を言う。

 いつもならそんな彼の態度にはヒヤヒヤさせられるが、今回ばかりは私も同意見だった。

 ビアンカの赤い瞳が私達をまっすぐに捕らえたまま離さない。

 まるで品定めでもされているようで、なんとも居心地が悪かった。

 ライゼちゃん達の助けになりたい、という高ぶった気持ちが、しおしおと萎んでいく。

 なんだかいきなり壁にぶち当たってしまった気分だ。

「何で? お兄さんだってモンスターと仲良いのに」

「!?」

 ラウト君の何気ない言葉にラグは慌てたように後ろ髪に手をやった。

 間違いなく、それはブゥのことだ。いつからバレていたのだろうか。

 私は驚くと同時、後ろのセリーンのことが気になった。

 彼女にはまだ、ブゥのことを話していない。

「その子なんていうの? 名前あるんでしょ?」

 目を輝かせてこちらに近寄ってくるラウト君。

「ねぇ、いつになったら起きるの?」

「こ、こいつは……」

 ラグもちらちらと横目で背後を気にしている。

 と、セリーンがそれに気づいたのか、小さく溜息を吐いた。

「なんだ? もしかして私が気づいていないとでも思ったか?」

 呆れたように言うセリーンにラグは拍子抜けしたような、なんとも複雑な表情をした。

 私もきっと同じような顔をしていたのだろう。セリーンが面白がるような瞳で私を見た。

「私が切りかかるとでも思ったか? モンスターだからと言って人に危害を加える者ばかりではない。それは誰もが知っていることだ。……まぁ、名前まで付けて可愛がっている人間は、そうはいないがな」

「ぐっ……」

 顔を引きつらせて言葉に詰まるラグ。

(ひょっとして、ラグがブゥのことをセリーンに黙ってたのは、モンスターと仲が良いってことを知られたくなかったから……?)

「ねぇお兄さん! その子、何て名前?」

 と、ラウト君がこちらの会話などお構い無しにラグの服をぐいぐいと引っ張っていた。

「こ、こいつは……ブゥだ。ブゥ、もう起きていいぞ」

 その半ばヤケクソ気味な声にブゥがすぐに反応する。

 ゆっくりと状況を確認するように翼を広げ、ラグの髪の毛からふわりと飛び立った。

「ぶ?」

 ブゥはまるで「いいの?」とでも言っているかのようにラグの周りをゆっくりと旋回した。

「うわぁ、可愛い! ブゥっていうんだ! ブゥ、おいで!」

 ラウト君はブゥを捕まえようと両手を伸ばした。

 だがブゥはその手から逃げるようにしてラグの頭の上に乗ってしまった。

「ラウト、その子怖いって。もう少し慣れてからにしなさい」

「はーい」

 ラウト君は羨ましそうにラグの頭上を見ながらライゼちゃんとビアンカの元へ戻っていった。

「アンタ、もしかして……こいつの言ってること、わかるのか?」

 ラグが言いにくそうにライゼちゃんに訊ねた。

 その声には驚きと共に期待が込められているように聞こえた。

 それはそうだろう。誰だって自分が可愛がっている動物の声を聞くことが出来たら嬉しい。

 私はそんなラグの横でこっそりと微笑んだ。

「はい。大抵のモンスターの声は聞こえます。それが神導術士の力ですから。その子は、とても貴方のことが好きなようですね」

 ライゼちゃんはなぜか悲しそうにブゥの方を見つめて続ける。

「元々、術士は万物に好かれる存在です……。それを、その力を、あなた方魔導術士は、……いえ、すみません。今此処でする話ではありませんね。失礼しました」

 ライゼちゃんが申し訳無さそうに瞼を伏せた。

 ――瞬間ドキリとした。

 ライゼちゃんのその言い方は、ラグを――魔導術士を酷く嫌っているように聞こえたから……。

 最初に二人が顔を合わせたときもそうだった。ライゼちゃんはなかなかラグと目を合わせようとはしなかった。

 同じ術士でも、ひょっとして“魔導術士”と“神導術士”は仲が悪いのだろうか。

 ライゼちゃんのその魔導術士を非難するような言葉に、なぜかラグは何の反応も示さなかった。彼のことだから、何か言い返すかと思ったのだけれど……。

 その横顔からは何の感情も読み取れなかった。

「で、どうするんだ? カノン」

 セリーンに言われ、私の思考は一旦途切れる。

 そうだ。今はまずビアンカに乗ることを考えなければならない。

 ラグとライゼちゃんの間に流れる不穏な空気のわけは激しく気になるけれど、訊ける雰囲気ではない。

「えっと、その……ビアンカ? 落ちたりしない?」

 彼らからしたら随分マヌケな質問だったかもしれない。

 でもライゼちゃんはにこりと笑って答えてくれた。

「大丈夫です。鱗をしっかりと握っていれば落ちたりしません」

「う、うろこ……」

「それに、万が一落ちてもビアンカはすぐに対応してくれます」

 ライゼちゃんの笑顔に私は空笑いで応える。

 と、ラウト君が私達の間に割り込むかたちで口を開いた。

「お姉さん、高いところ平気?」

「え? うん。まぁ……」

「なら大丈夫だよ! 風がとっても気持ち良いんだよ!」

 確かに、高いところが苦手な人だったら絶対に無理だろう。

 その後ラウト君は同じことをラグとセリーンにも訊いた。

 セリーンは「平気だ」と一言。

 先ほどビアンカに対してあんなに否定的だったラグも溜息を吐きつつ頷いていた。

 ブゥのことを出され、文句を言い辛くなったのか、それとも……。

「良かった! ……じゃあ、ダメなのお父さんだけだね」

「え!?」

 何気なく出たラウト君の言葉に私は思わず大きな声を上げてしまい、慌てて口を塞いだ。

 ちらりと背後を見ると、すでにヴィルトさんは気分悪そうに口元を押さえていた。

 ……人は見かけによらないとはこのことだ。

「父さん、大丈夫?」

「…………」

 娘であるライゼちゃんに気遣われ、ヴィルトさんは無言でゆっくりその手を離した。

 失礼な話だが、そんな彼の姿を見たら急に私の中に勇気が湧いてきた。

(ヴィルトさんごめんなさい。でも、ありがとうございます!)

 そう、心の中で呟いてから

「ビアンカ。よ、よろしくね!」

精一杯の笑顔で――かなり引きつっていたかもしれないが、ビアンカに声をかけてみた。

 すると彼女は、返事するように蛇特有のあの割れた赤い舌をチロリと出した。



「そろそろ潮が満ちてくる頃です。急いでください」

 ライゼちゃんのその言葉に私達は躊躇している間もなく焦ってビアンカに乗ることとなった。

 この洞窟の入り口は潮の満ち引きによって現れたり消えたりするらしい。そのおかげでこの国の人たちにも未だ見つかっていないのだという。

「皆さん、準備はいいですか? しっかりと鱗を掴んでいてくださいね」

 私達の方を振り向きライゼちゃんが言う。

 私はドキドキと高鳴る自分の心臓の音を聞きながらビアンカのひんやりとした鱗をしっかりと握り締めた。

 私の前にはラグと、吹き飛ばされないようにとその胸ポケットに入ったブゥ。

 後ろにはセリーン。そして最後尾にヴィルトさん。……ちらり後ろを見ると、彼はすでにしっかりと目を閉じていた。

 ――先ほどラウト君がこっそり教えてくれた。

 初めてライゼちゃんたちと会ったあの時、ヴィルトさんはあの地下室で寝込んでいたらしい。

 それを心配したラウト君はひとり薬を買うために街に出た。

 だがすぐに後を追いかけたライゼちゃんとともにあのバッソとかいう兵士に捕まってしまったのだそうだ。

 ヴィルトさんをそんな状態にさせてしまったビアンカの乗り心地は一体どれほどのものなのだろう。

 でももう後戻りは出来ないし、したくない。

 私は改めて気合を入れた。

「よっし、ビアンカ出発だ!」

 先頭のラウト君が岩の間から見える夜空をびしっと指差した。

「ビアンカ、お願いします」

 二人の声に答えるように、ビアンカはその大きな白い翼をバサリと動かした。

(うわっ……!)

 途端、その一度の羽ばたきだけで総勢6人と1匹を乗せた重そうな身体がふわりと地面から浮き上がった。

 二度目の羽ばたきで、ぐんっと後ろに引っ張られる感覚と共に強い風が全身を襲った。

 気圧の急激な変化に鼓膜が悲鳴を上げる。

 でも次に目を開けた瞬間眼前に広がったのは、満天の星空と白く大きな月に照らされキラキラと輝く大海!

「うっわあ〜!!」

 その神秘的な美しさに思わず感嘆の声が漏れていた。

 先ほどの強い風も、今はまるで自分がその風になってしまったかのように心地よく全身を撫ぜていく。

「ねー! 気持ちいいでしょー!?」

 前方からラウト君の大きな声。

「うん、気持ちいー!」

「はしゃぎ過ぎて落ちるなよ」

 そんなラグの呆れたような声も、風と共に私の横を通り過ぎていく。

 眼下にはルバートの港を確認することができた。大きな船が何隻も泊まっている。

(本当ならあの船に乗って行くつもりだったのに……)

 まさかこんなふうにドラゴンさながらのモンスターに乗って空を飛ぶなんて思いもしなかった。

 薄い雲を追い越し、月に向かって行くようにグングン上昇していくビアンカ。

 流石に肌寒くなってきた頃、体制を整えるようにビアンカはその翼を一度大きく羽ばたかせた。

「もう手は放しても大丈夫ですよ。あとはまっすぐ進むだけですから」

 そんなライゼちゃんの声を聞きながら、私はおっかなびっくり足元を見下ろす。

 そしてその吸い込まれそうな闇に、ぎゅっとビアンカの鱗を掴み直した。

「まさかフェルクレールトに着くまでの間、一度も降りないつもりじゃねぇよな」

 ラグが自分の前にいるライゼちゃんに訊く。

「何度か休憩を取りながら向かいます。私達は町には入れませんが、どこか途中で寄りたい場所がありましたら……」

「さすがに腹が減ったんでな、どこでもいいから一度町に降ろしてくれ」

「それならキャルムの町にしよう。美味い料理を出す店がある」

 セリーンがライゼちゃんにその町の場所を伝えている間、私は自分も空腹だったことを思い出しゴクリと喉を鳴らした。

 と、そのときだ。

「ブゥ?」

 そう、ラグが小さく呟くのが聞こえた。

「なに? ブゥどうしたの?」

「……震えてやがる。おいブゥどうした、寒いのか?」

「ぶぅぅぅ〜」

 返ってきたのはそんな弱々しい鳴き声。

 と、セリーンとの話が終わったらしいライゼちゃんがラグの胸ポケットを見て心配そうに言った。

「あぁ、とても怖がっていますね」

「怖が……!?」

「はい。きっとここまで高く飛んだことがないのでしょう。……ビアンカ、お願い。もう少し下を飛んでもらっていい?」

 するとビアンカは緩やかに下降し始めた。

「ブゥ、大丈夫か?」

 ラグの気遣わしげな声が小さく聞こえてきた。

 ――まさか、ビアンカと同じく翼を持ったブゥが高いところが怖いなんて思ってもみなかった。

(ブゥのことも気になるけど……)

 私はセリーンの背後へと視線を送る。

 ヴィルトさんは深く眉間に皺を寄せやはり目を瞑っていた。……その大きな手はしっかりと鱗を掴んでいる。

「そのキャルムの町まではどのくらいかかりそう?」

「おそらく明け方までには着くと思います」

 私の質問にライゼちゃんが答えてくれた。

 明け方と言っても、今が一体何時頃なのか私には検討がつかなかった。

(なるべく早く着きますように……)

 私は様々な意味を込めて白く浮かぶ月に願った。




戻る小説トップへ次へ

inserted by FC2 system